森園収録のコンピレーション・アルバム! Acoustic Guitar Summit / V.A. ビクターエンターテインメント VICL−61170 2003年09月21日 リリース! |
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収録曲 |
1. RIO FUNK/Lee Ritenour 2. AGHARTAへの道/J & B featuring 角松敏生 3. Orson's Restaurant/Kapono Beamer 4. After the Rain/森園勝敏 5. Azure〜Polovetsian Dance from Opera“Prince Igor”/天野清継 6. Happy Christmas/安藤まさひろ&みくりや裕二 7. 野性の風/Ulisses Rocha 8. Blue Cloud/PINK CLOUD 9. RAINBOW/Lee Ritenour 10. Moonlight Serenade/吉川忠英 11. DANCE WITH ME/Earl Klugh 12. Platypus/GONTITI 13. HAWAIIAN VILLAGE/秋山一将 14. GREENSLEEVES/Jeff Beck |
(ライナー) 本来、ギターといえばアコースティックだった。ガット弦(現在はナイロン弦が主流となっている)のクラシック・ギターから始まり、19世紀後半あたりにスティール弦のギターが誕生してからは、カントリー、ブルース、フォークなど、あらゆる音楽でアコースティック・ギターがその音楽を支えてきた。だが30年代にエレクトリック・ギターが発明され、ジャズそしてロックが台頭してくると状況は一転、エレクトリックの大音量の中に埋もれてしまい、ステージではハウリング等の問題も抱えたアコースティック・ギターは、フォークやカントリーといった限られたジャンルの音楽や、一部ロック・ミュージシャンがレコーディングで使うなどといった、限定的な使われ方をする楽器になってしまっていった。しかし70年代後半、“圧電式/ピエゾ”という、ハウリングに強く、アコースティック・ギターの繊細な音色を損なわないピックアップが登場し、また“オヴェイション”という、ロック/ポップスに自然に溶け込む音質のアコースティック・ギターが登場してくると、アール・クルーなどをはじめとしたギタリストたちが、エレクトリック・サウンドの中でアコースティック・ギターをフィーチュアするスタイルを摸索し始め、彼らの探求によって、アコースティック・ギターはロック/ポップスの世界でも市民権を得るようになっていった。さらに90年代に入ってからは“アンプラグド”という発想が生まれ、今やアコースティック・ギターは、音楽シーンになくてはならない存在になっている。 このCDは、様々なジャンルのトップ・ギタリストたちによる、アコースティック・ギターのプレイを集めたものだ。これを聴くと、一言にアコースティック・ギターといっても、ギタリストによって様々な表情があり、またバックのサウンドによって印象が変わってくるということが、よくわかると思う。また優れたギタリストは、アコースティックを弾いてもやっばり素晴らしいということも、これらの演奏から伝わってくる。アコースティック・ギターは、ギタリストの指の表情が最もよく出る楽器であり、とても人間くさい“生身”の楽器なのである。 |
1. RIO FUNK/Lee Ritenour フュージョン・ギター・シーンをリードし続けてきたギター・ヒーロー、リー・リトナーが全編アコースティック・ギターを弾いて話題を呼んだ、79年のブラジル録音盤『In Rio』からのナンバーで、彼の代表曲(といってもこの曲はニューヨーク録音だが)。エネルギッシュなブラジリアン・ファンクで、マーカス・ミラー=バディ・ウィリアムスのタイトなリズム・セクションに乗って、ナイロン弦のギターを強いピッキングで弾くリーのギター・プレイが印象的だ。 Guitar:Lee Ritenour Drums:Buddy Williams Bass:Marcus Miller Rhythm‐Guitar:Jeff Mironov Keyboards:Dave Grusin Percussions:Rubens Bassini Soprano Sax&Flute:Ernie Watts 2. AGHARTAへの道/J & B featuring 角松敏生 梶原順と浅野祥之という、日本を代表するふたりのセッション・ギタリストが中心になって結成されたユニット“J&B”の、2002年のアルバム『Smiling』に収録されていたナンバー。元々は角松敏生や浅野祥之が結成した覆面グループ“AGHARTA”のレパートリーで、この曲には作曲者の角松敏生自身もフィーチュアリング・ゲストとして参加している。中央でメロディを弾いているのが角松敏生で、左チャンネルのナイロン弦が梶原順、右チャンネルのスティール弦が浅野祥之だ。アコースティック・ギター3本のアンサンブルはとても自然で、彼らのアレンジ・センスはさすがだといえる。さらにJ&Bのふたりのプレイが素晴らしいのはもちろんだが、角松敏生のギタリストとしての実力もかなりのものだということがよくわかる演奏である。 Guitars:Jun Kajiwara、Asano "Butcher" Yoshiyuki Featuring Guitarist:Toshiki Kadomatsu 3. Orson's Restaurant/Kapono Beamer 複数のギタリストの共演盤としてギター・ファンに愛されたシリーズ“Guitar Workshop”のハワイ版ともいうべき『Pacific Coast Jam』(89年)から。プロデュースは「AGHARTAへの道」にも参加していた角松敏生で、この曲も彼の書き下ろしだ。ギターのカポーノ・ビーマーは、ハワイ出身の売れっ子セッション・ギタリストで、スラック・キー・ギター奏者としても知られている。角松自身がプログラムしたサウンドに乗せて、カポーノがドラマティックなギター・プレイを聴かせている。ちなみにトランペット・ソロは数原晋で、リズムのアコースティック・ギターは古川昌義。 Guitar:Kapono Beamer Synthesizer Programming:Toshiki Kadomatsu Rhythm‐Guitar:Masayoshi Furukawa Trumpet:Susumu Kazuhara Synthesizer:Shingo Kobayashi Manipulator:Kan‐ichiro Kubo 4. After the Rain/森園勝敏 “四人囃子”“プリズム”などといったグループで、個性的なギター・プレイを聴かせていた森園勝敏の85年のリーダー・アルバム『4:17p.m.』に収録されていた、森園勝敏のオリジナル。ボサ・ノヴァっぽいリズムに乗せて、美しいけど、やっぱり彼らしくひとクセもふたクセもあるメロディを奏でていく。やけに音に伸びがあったり、チョーキングを使うなど、エレクトリック・ギター的なアプローチが、とても新鮮だ。 Guitar:Katsutoshi Morizono Keyboards:Soichi Noriki Additional Synthesizer:Yoshikazu Matsuura Bass:Koki Ito Drums:Jun Aoyama Percussion:Mac Shimizu 5. Azure 〜Polovetsian Dance from Opera“Prince Igor”/天野清継 渡辺貞夫、MALTA、中本マリ、阿川泰子、矢沢永吉などといったミュージシャンたちと共演し、また国府弘子とのユニット“Heaven”でも活躍していた天野清継の出世作。91年にJTピース・ライト・ボックス”のテレビCMソングとして使われ、本人も出演し、大きな話題を呼んだ。オリジナルはロシアの作曲家、ボロディン作曲のオペラ『イーゴリ公』の中の「ポロヴィッツ人の踊りと合唱」をアレンジしたもの。アコースティック・ギターによる哀愁を帯びたメロディ・ラインと、アメリカ西海岸のトップ・ミュージシャンたちによる演奏が、クラシック曲を見事にフュージョン化している。 Guitar:Kiyotsugu Amano Acoustic Piano:Hiroko Kokubu Bass:Gregg Lee Drums:Akira Sotoyama Synthesizers:Don Grusin Flute:Gary Herbig Percussion:Alex Acuña Concert Master:Masatsugu Shinozaki 6. Happy Christmas/安藤まさひろ&みくりや裕二 日本のフュージョン・シーンをリードしてきたT-SQUAREのリーダーとして、現在精力的に活躍中の安藤まさひろと、T-SQUAREデビュー時(当時は“THE SQUARE)のメンバーだったみくりや裕二の、98年の共演アルバム『Water Colors』から。ジョン・レノンが71年に発表した、おなじみのクリスマス・ソングだ。ちなみに右チャンネルでメロディーを弾いているのが安藤まさひろで、左がみくりや裕二だ。安藤はビートルズの大ファンとして知られているが、打ち込みサウンドをバックに、シンプルだが温かいアコースティック・ギター・デュオを展開している。 Guitars:Masahiro Andoh、Yuhji Mikuriya 7. 野性の風/Ulisses Rocha Guitar Workshopシリーズのブラジル版 『Guitar Workshop in Rio』(91年)から。ウリ−セス・ローシャはブラジル出身のセッション・ギタリストで、ガル・コスタ、イリアーヌなどをはじめとする数多くのアーティストと共演している。またリズム・ギターをプレイしているオスカー・カストロ=ネヴィスは、セルジオ・メンデスとの共演を経て、現在はウエスト・コーストのスタジオ・シーンで活躍中のベテランだ。この曲は今井美樹の87年のヒット曲で、映画『漂流教室』の主題歌でもあった。この筒美京平メロディを、軽快なサンバにしてしまったアレンジ・センスが素晴らしい。ウリ−セスのギターも、とてもハートフルにこのメロディを歌い上げている。 Guitars:Ulisses Rocha、Oscar Castro‐Neves Synthesizer:Oscar Castro‐Neves Drums:Teo Lima Bass:Luizão Maia Electric Piano:Gilson Peranzzetta 8. Blue Cloud/PINK CLOUD 日本が世界に誇るロック・ギター・ヒーロー、Charを中心に、ジョニー吉長、ルイズルイス加部(正義)によって結成されたパワー・トリオ“PINK CLOUD”の90年のアルバム『INDEX』に収録されていたナンバー。ファンキーなリズムをバックに、Charのスティール弦のアコースティック・ギターが、ブルージーにメロディを歌い上げていく。強めのピッキングでパキパキとプレイするソロが爽快だ。Charはアコースティック・ギターを弾いてもやっぱりロック・ギタリストであり、それがたまらなくカッコいい、ということを見事に証明している演奏だ。 Guitar:Char Drums:Johnny Yoshinaga Bass:Masayoshi Kabe 9. RAINBOW/Lee Ritenour これもリー・リトナーの『In Rio』から。キーボード・プレイヤーのドン・グルーシンのオリジナルだ。爽やかな夜明けを思わせるサウンドと、アコースティック・ギターのメロディが美しい。リーはナイロン弦を、ピックでプレイしているようで、歯切れのいいアタックが、とても彼らしい。ブラジリアン・リズム・セクションのしなやかなグルーヴ感も、曲にマッチしていて気持ちがいい。 Guitar:Lee Ritenour Drums:Paulinho Braga Bass:Luizão Maia Rhythm‐Guitar:Oscar Castro-Neves Keyboards:Don Grusin Percussions:Chico Batera、Jose Da Silva、Roberto Pinheiro、Armando Marcal 10. Moonlight Serenade/吉川忠英 大滝詠一、松任谷由実、福山雅治、古内東子、Kiroro、大沢誉志幸など、数多くのアーティストのレコーディングやライヴに参加している、日本を代表するアコースティック・ギタリスト(本人は“アコギスト”と呼んでいる)吉川忠英の2000年のアルバム『Arrows』から。スウィング・ジャズの巨匠、グレン・ミラー・オーケストラのテーマ・ソングであり、今でも世界中の音楽ファンから愛され続けている名曲だ。このロマンティックなメロディを、吉川忠英はスティール弦のギターでじっくりと歌い上げている。 Guitar:Chuei Yoshikawa 11. DANCE WITH ME/Earl Klugh フュージョン・サウンドとアコースティック・ギターを巧みに融合させ、今日のアコースティック・ギターのひとつのスタイルを作り上げたパイオニアが、アール・クルーだ。この曲は、初期の代表作として名高い『Finger Painting』(77年)からのナンバーで、ギタリストのジョン・ホールを中心としたロック・グループ“オーリアンズ”の75年の大ヒット曲(全米6位)。指弾きで、繊細なニュアンスを見事に表現しながらも、力強さも兼ね備えたアール・クルーのギターが素晴らしい。またルイス・ジョンソンのスラッピング・ベース一発も、この曲の聴きどころのひとつ。 Guitar:Earl Klugh Keyboards:Dave Grusin Bass:Louis Johnson Drums:Steve Gadd Percussion:Dave Grusin 12. Platypus/GONTITI “癒し系ギター・デュオ”ともいうべき、心地よいギター・アンサンブルを聴かせてくれている、ゴンザレス三上とチチ松村の2人組“GONTITI”。この曲は2000年のTBSテレビ番組「スーパー知恵MON」のテーマ曲で、同年の彼らのベスト盤『Best of Gontiti Works』に収録されていた。ちなみに“Platypus”とは“カモノハシ”の英語名である。打ち込みによるサンバのビートに乗って、ポップで親しみやすいメロディを、ふたりのギターを中心に、ピアノやフルートとのアンサンブルで軽快に聴かせている。 Guitars:GONZALEZ MIKAMI、TITI MATSUMURA 13. HAWAIIAN VILLAGE/秋山一将 10代の時からプロとしての活動を始め、“天才ギタリスト”と話題になった秋山一将の、79年の作品。Guitar Workshopシリーズの第3弾で、ダイレクト・カッティンによってレコーディングされた『Guitar Workshop Vol.3 DIRECT DISK』に収録されていた。当時スタジオ・ライヴ一発で、ここまでクリアなアコースティック・ギター・サウンドをレコーディングしていたというのは驚異的だ。また、まるでエレクトリック・ギターのように、スーパー・テクニックで弾きまくる秋山一将がすごい。やはり彼はただものではないギタリストだ。 Guitar:Kazumasa Akiyama Electric Piano:Masanori Sasaji Synthesizer:Junko Miyagi Drums:Akira Doi Bass:Motohiko Hamase 14. GREENSLEEVES/Jeff Beck ブリティッシュ・ロックのギタリストの中には、ブリティッシュ・トラッド・フォークから影響を受けている人も多いが、孤高のギター・ヒーロー、ジェフ・ベックもそのひとり。これは彼の68年のアルバム『Truth』に収録されていたもので、彼が珍しくアコースティック・ギターをプレイしているトラックだ。曲はイングランドのトラディショナル・ナンバーで、フォーク・グループなどがよく取り上げている他、ジャズではジョン・コルトレーン、ウェス・モンゴメリーなどの名演がある。スティール弦のギターで、メロディをストレートにつま弾いており、ベックの“静”の部分が絶妙に表現されている。 Guitar::Jeff Beck 〔Jul.2003 熊谷美広〕 |